2014年1月30日木曜日

バッグを染める。

皆さんこんにちは。
今日は比較的暖かいのに、雨が降ってしまいましたね。
もちろん、雨の日も当店営業しております。
なかなか、足が向かないとは思いますが、ご来店お待ちしております!!

そんなわけで、今日はこちら。

作りもしっかりしていて、革の雰囲気もとても良い鞄をお預かりしました!
是非、ながーく使っていただきたい革鞄です。

ところで・・・。
ひとえに『良い革』といっても、なかなかどうして難しいですよね。
そこで、少しだけ革について。
私の考える『良い革』のお話をさせてくだい。

私の場合は、やはり革らしい革が良い革だと思います。
どういう事かというと、『表面の加工があまりされていない革』が良い革だと思います。
たとえば、ヌメ革なんて言われる革ですね。
ルイヴィトンのバッグのハンドルのような革です。
なんとなくわかるでしょうか?
表面に水がつくと、スッと染み込んでしまうような革です。
水が染みこむという事は、皮革用クリームの油分や水分が、革にしっかり浸透するという事です。
そういう革の方が、お手入れをすることで、長持ちさせることが出来ますし、使い込んでいく過程で、いわゆる『味』が出てきます。
『今風』と言っている時点でダメな気はしますが、今風にいうとエイジングが楽しめる革ですね(笑)。

ただ、もちろん、その他の革が悪いと言うわけではありませんよ!
あくまで、個人的な意見です。

私の思う良い革とは、違う方向の考え方で、良い革ももちろんあります。
ある意味対極にあるのが、表面をビニールのような素材で塗って仕上げてある革ですね。
そういう革ももちろん、中身は革なので、ある程度の耐久性があります。
また、雨に当たっても、水が染み込んだりしないので、使い勝手が良かったりします。
実際、私は、そういう革の靴も普通に履きます。
なんといっても雨の日に楽ですから(笑)!
ローファーなどで良く見かける、ガラス仕上げなんて言われる革もそうだったりしますね。
ただ、靴クリームを塗っても、表面がしっかり作りこまれてしまっているので、水分や油分が浸透しません。
なので、どんなに丁寧に扱っても、表面が裂けてくることを防ぐことが出来ません。
それでも、合皮の靴に比べると圧倒的に長持ちはしますけどね。

そんな感じです。
本当は、『革』についてはもっと、もっと話したいところですが、読むのもしんどいと思うのでこの辺にします(笑)。

ようやく本題に入ります(笑)。



良い革なのですが、鞄の場合、角や、縁がどうしても擦れてきてしまいます。
これも、避けては通れない状況かと思います。

そんな時は。
まず全体に、埃や汚れを落とします。

細かいところまでブラシでシャシャっと綺麗にしていきます。
皮革製品の日常的なケアでしたら、こうったブラッシングだけでもしていただけると、良いと思いますよ。
たまってしまった埃が水分を吸ってカビの原因に、何てこともあったりします。
埃を落とすような、日常的な軽いケアには、馬の毛のブラシが良いですよ!
化繊や豚の毛のブラシに比べ、毛が適度に柔らかいので、デリケートな素材にも問題なく使えます!
当店では1260円でご用意してあります。



今回は擦れている部分の色も落ちてしまっているので、まず全体に軽く下地剤を塗っていきました。
これは、アクリル樹脂なのでごく軽くにします。
『表面加工があまりされていない革が良い』と言ったのにこれを、あんまり厚く塗ると表面に、しっかり膜が出来てしまうので、気をつけながらの作業になります。

そして、しっかり乾燥させてから、今度は染料で色の抜けている部分に補色していきます。
先ほどの良い革の話ではないですが、染料をしっかり染みこませます。


ここでまた少しだけ。
靴やバッグの修理店でバッグや靴の半分だけ綺麗に染めてあるサンプルをご覧になったことはありませんか?
ああいった物の場合、染めるとは言いますが、厳密に言うと表面を塗っています。
染み込ませるのではなく、塗っている形です。

今回私が使っている『染料』は、染みこませて染めるものです。
それに対して表面を塗るものは、『顔料』と言われるものになります。

これもまた、顔料が悪いと言う話ではなく、ケースバイケースでの使い分けがとても重要になってきます。

顔料で表面を塗ると、概ね新品のように仕上がります。
ですが、永く使ううちに、顔料が剥がれます。
また表面の『良い革』の雰囲気がなくなってしまうのが大問題です。
自然な革の色の濃淡がなくなり、ペタッとした完全に同じ色になってしまいます。

そのあたり、修理依頼をする際は皆様お気をつけください。
思いのほか雰囲気が変わることがあります。


さて、また戻ります(笑)。


全体を綺麗に染め直したら、色止めをします。
これもまた液体のものを塗りこんでしっかりと乾かします。

ショルダー紐や、ハンドルに関しては色落ちすると、お洋服を汚す恐れがあるので、スプレータイプの合成樹脂も使い、しっかり色止めをします。
これも、本当はしたくないくらいですが、色落ちはやはり、良くないので必要最低限、使っていきます。

ちなみに顔料ですと、色落ちの心配はほとんど無かったりします。
やはり、一長一短ですね。


一通り、作業が済むと。

いかがでしょうか?
綺麗に色も入り、ツヤも戻りました。

後は全体に、無色の乳化性のクリームを薄く塗り、油分を補給してあげます。
そして、しっかり乾拭きをします。

シャシャシャッと乾拭きしています。

いかがでしょうか?
全体に自然なツヤ感がもどり、擦れた部分も色が入ったので落ち着きます。
擦れたところに関しては、若干の合成樹脂と、最後の乳化性のクリームに入ったワックスでだいぶ擦れた感じが抑えられて、綺麗に仕上がります。

こちらのバッグのお手入れ、3150円で最長1週間程度いただきます。

やはり染料で染めているので、永く使ったことによる革のムラ感がのこり、また良い雰囲気です。
この鞄、欲しいです(笑)。

みなさま、皮革製品、適切なお手入れで本当に良い状態で使うことが出来ますよ!!
ご自分でお手入したい!と思ったら、相談だけでも来てください!

皆様のご来店、心よりお待ちしております!!