2014年2月16日日曜日

グレンソンのヒールカウンター修理

皆様こんにちは!!
昨日おとといと、足元が悪い中ご来店くださったお客様、本当にありがとうございます!!
まだまだ、日陰のところは雪が残ったりしてるので、くれぐれもお気をつけください。

さて、今日はこちら。
イギリスの1866年創業の老舗の英国靴グレンソンです!!
やっぱり良い靴です。
憧れます!!
靴のカカトの部分の写真です。
中央の縫い目より、やや右側に亀裂が入っているのがお分かりになるでしょうか?
今日はこちらのお修理です。

そもそも、ヒールカウンターってなに?と言いますとカカトの固くなっている部分のことです。
この硬くなっている、芯の入っている部分が、靴の型崩れをなくすのはもちろんのこと、何より足をしっかりとホールドする役割を持っています。
逆にここがしっかりしていない靴は、踵が抜けやすかったり、安定感がなくなってしまいます。
『良い靴』を見分ける一つの目安になりますよ。
かかとの上のほうが、きゅっと、すぼまっている形に作られていると、より良いかと思います。
木型の話になってきますね。

とりあえず、今回は早めに本題に(笑)。
で、今回なぜここに亀裂が入ってしまったかと言うと。
触るとわかるのですが、写真のようにカカトの部分がふにゃふにゃになってしまっています。
正直なところ、ここまで中の芯材が壊れてしまうのは、あまり見かけません。

こちらの靴をお持ちのお客様の、他の靴も拝見しましたが、シューズキーパーも使用されていますし、靴べらをまったく使わないと言ったことはないように思うので、より不可解です。

ちなみに、紐を解かず、靴べらを使わずグイッと足を入れてしまう方は、この部分の痛みが非常に早いです。
若干面倒なのはわかりますが、ぜひ、靴紐を緩めて靴べらを使って靴を履く癖を着けていただきたいです。
極端なことを言えば、スニーカーでもそうですね。
靴を長持ちさせたいのであれば、よろしくお願いいたします。

さて。
少しだけ靴の作りの話をすると、この芯材、作るときは芯材の形を靴の形に合わせてから、ライニング(裏地の革)とアッパー(表の革)の間に入れて、木型に釣り込んで(巻きつけるようにして)、靴の形を作っていきます。
なので、芯材だけ抜き取って交換という事が非常に難しいパーツとなります。
というより、限りなく不可能に近いです。
もしやるとすると、底部分を全部外して、釣り込んである中底、アッパー等を外しなおして、取り外すことになるので、おそらく同じ形の木型がないと、同じ形に戻していくことは不可能かと思われます。

そこで、今回はできる限り近い形で補強していきます。
まずは、履き口の糸をほどいて、中の状況を確認します。




裏地の中側はこんな感じでした。
やはり元々入っている芯材が割れてしまっています。
手前に縦長に割れた部分が倒れてきています。
そこで、今回は写真のようなイメージで、やや厚めの革で補強していきます。
以前他のお修理でもご紹介しましたが、まず中に入れる革の周りを極限まで薄く漉きます。
これをしておかないと、中に何か入れたなというのが当たりがでてわかってしまうからです。
ぐるっと一周限界まで薄くします。

そうしたら、この革をライニングとアッパーの間に接着していきます。
これが中に接着した状態、ちょっとわかりづらく、すみません。

今回は元々、外側からアッパー→芯材→ライニングの順になっていましたが、新たな補強用の革を、アッパーと芯材の間に入れるか、芯材とライニングの間に入れるか、かなり悩みました。

アッパーと芯材の間に入れると、アッパーの破れた部分の補強にはなりますが、周りをしっかり漉いたとはいえ、不自然な段差が後々出る可能性があります。

逆に、芯材とライニングの間に革を入れると、おそらくアッパーに響く影響は少ないと思いますが、補強としては弱くなる恐れがあるというところの、ジレンマでした。

ですが、今回は、やはりヒールカウンターをしっかりさせることを優先させたかったため、アッパーと芯材の間で、アッパー側に直接接着する方法を選びました。
どことどこを接着するのかも色々悩みましたが、最善と思われる方法を選んでおります(笑)。



そして、剥がしたライニングなど、一度もとの位置に戻していきます。
このとき、芯材が崩れたせいでダブついてしまっていたライニングも調整しておきます。

そして、そのライニングの上からさらに一枚革をあてて、履き口を縫い直せば概ね出来上がりです。
もちろん、余った革はカットしてしまいます。

内側、外側ともに概ね違和感がないかと思います。
傷はやはり残ってしまいますが、触ったときのヒールカウンターのしっかりした感じは概ね完全に戻っています。
あくまでも、補強というかたちなので、経過観察は必要ですが、これでかなり延命できるかとは思います。
ブログをご覧の皆様にも是非触っていただきたい感じなのですが残念です(笑)。
かなり、しっかり仕上がっております。

こちらのお修理、3675円で1週間程度いただきます。

もちろん、状態をみてどういった修理が必要か、判断させていただきますが、ほぼ間違いなく靴の不具合は新しいものをお買い上げになるより、お安くお修理することができます。
是非ご相談ください!

皆様のご来店心よりお待ちしております!!