2014年5月24日土曜日

履き口の補強。靴の履き口が破れたら!

皆様こんにちは!
西武新宿線、井荻駅の靴とバッグの修理店doekです!!
井荻駅南口を出て、右へ。
みずほ銀行のATMの角を環八側道沿いに左へ行きます。
ドラッグストアぱぱす、焼き鳥屋さん、当店doekとなっております!!
駅から1分もかからない場所にございます!!
のぼりと、金の長くつが目印です!!
老若男女、皆様、気になる金の長靴、特に子供たちには絶大な人気を誇ります(笑)。
駅側から見えづらいのが残念です...orz.


さて、気を取り直して。
今日ご紹介するのはこちら!
勘のよい人は、この時点でピンと来るかと思います。
一昨日に続いて、ビンテージシューズですね!

わかりますか?この張り出したウエルト、えげつないほどピッチの細かい出し縫い!!
素晴らしい仕事をしております!
こちら一昨日同様、SUPER8SHOES様からお預りいたしました!!
http://www.t-8intl.com/index.html


しかもデッドストックですね。
わかりますか!?この靴底の立体感。
土踏まず部分のえぐれ具合。
美しい!!

ですが、ですが、ですが。
問題はこちら。
お分かりになりますでしょうか?
履き口を中心に、ライニングアッパーとも、かなり破れてしまっています。
一見、なんとも無いように見えて実は、やはり油分が抜けてしまっており、革が乾燥して、劣化しやすくなっているという事がございます。
もちろん、扱い方にも問題がある場合がございます。

考えても見てください、こちらの靴50~60年前のものだと思うのですが、デッドストックという事は、その期間ずっと置いてあったわけで、やっぱり乾燥もします。
こんな時はたらふく、油分と水分を補給して革を出来る限り復活させたいところですが、正直なところそれで、どこまで回復するかは、なんともいえません。

そこで、もちろん、栄養補給はするとして、まずはしっかり補強をしていきます。



上の写真、靴の内側から見たところです。
違いがお分かりになるでしょうか?
ライニングが縫い目の下から切れてしまっています、赤い丸のところですね。
なので、まず履き口の部分に残っている、ライニングの切れ端を、糸を抜いてから外しました。
この手の作業が最後の仕上がりに響いてくるので、抜かりなくやっておきます。

そして、ライニングと表革の間に、1センチ程度の革帯を接着して、補強しつつ表側の破れを元の位置に修復していきます。
表革の裏にダイレクトに貼り付けるのがミソですね(笑)。
ライニングからの補強だけだと、履いているうちにライニングはしっかりしているのに、表革だけ裂けてくるといったことを予想しての作業になります。
これ、1本目の補強です。

そして、残っているライニングを補強した革帯の上から、これもしっかり接着していきます。
基本的に靴を製作する際、ライニングと表側はあまり強力には接着していません。
というより、全く接着していないことの方が多いかもしれません。
ですが、今回は補強の意味合いが強いので、接着できる部分は出来るだけしっかりと接着していきます。
カカト部分は、甲部分のように屈曲するわけではないので、ある程度の硬さが出ても問題ないというのも踏まえた作業になります。
これが、甲部分の曲がる部分だとすると、靴自体が硬くなり履きにくくなってしまいます。



実はこの段階で、ここの部分を引っ張っても、まず問題ないんじゃないかな?というくらいの強度は出ております。
ですが、心配性の私はというと・・・

こんな感じで履き口に沿って黒い伸び止テープを貼りました。
これはナイロン生地の、ほぼほぼ伸縮性の無いテープになります。
革で補強はしているものの、革はやはり伸縮性がかなりあります。
ライニング側からの補強のみで、そちらの革がそれなりに伸びたとき、表側がその伸びに耐えられなくなった場合を考えての補強になります。
このテープは、この後ライニングと縫いこむとき、一緒に縫える位置にあるのも重要ですね。
これ、2本目の補強になります。

そして。
内側にライニングになる革を張り込んで、全体を覆い、履き口の縫い目に沿って縫っていきます。
ビンテージシューズは、ここが現行の靴と違い、非常に気を使います。
ミシンのピッチが細かい上に針が細いんです。
もちろん、当店で一番細い針と、30番の糸で対応いたします。
ミシン目がずれてしまうと、それだけで革切れの原因になってしまうので慎重に進めます。


そして、余った部分をカットすると、こんな感じに仕上がります。
元々シングルステッチでしたが、悩んだ末口元はダブルステッチで仕上げております。
こちら、3本目の補強ですね。

今回は、やや、しつこいくらいの補強になっておりますが、ビンテージシューズという事もあり、慎重になっております。
これぞまさに、毛利元就の教えですね(笑)。
3段階で補強しております!


これでまた、ガツガツ・・・慎重に履いていただくことが出来るかと思います(笑)。
現行の靴ではもちろんですが、ビンテージシューズの場合、靴べらは必ず使ってください。
面倒な気もしますが、一日に2~3回程度のことかと思います。
靴べらは必ず使ってください。
二回言いました(笑)。

こちらのお修理、両足で4320円となっております。
お時間は、1週間程度いただきたいですが、お急ぎの場合は出来る限り努力いたします!

で、こちらの靴、もちろん最後は、磨いて仕上げるのですが、汚れ落しを軽く使った後に・・・
こちら、デリケートクリームをたっぷりと塗りこみます。
こちらのクリーム、少し通常の靴クリームと違ってラノリンという保湿成分が多く入っているそうです。
ウールを加工するときに出来る副産物のウールグリスを精製したものだそうです。
乳化剤の役目も果たし、なにより保湿力に優れ、浸透性が高く、化粧品なんかにも使われているとのこと。

実際使うと、通常の靴クリームよりもかなり、水っぽい感じがします。
今回のように乾燥が著しい靴に関しては、すごく良いと思います。
こちら、972円。

ただこちらのクリームほぼ、ツヤはでないので、デリケートクリームをしっかり塗りこんだ後、通常の靴クリームで磨いた方が、靴は良いかもしれません。
ツヤが必用ないばあい、これだけでも、もちろん大丈夫です。


ちょっと長くなってしまいましたが、ビンテージシューズにせよ、そうでないにせよ。
お気に入りの靴を少しでも、良い状態で長く履いていただくお手伝いが出来ればと考えております!!
あーだめになっちゃったなと、思ったら一声おかけください。
意外と、綺麗に出来ること多いですよ!
靴は直せます!!

それでは皆様のご来店、心よりお待ち申し上げております!!